Column

コラム

咬み合わせ治療の未来のために

 咬み合わせは、心身の健康状態と密接に関連しています。このことが発見されてからというもの、咬み合わせを整えることで身体の症状が軽快したり、運動機能が向上したり、精神面での病的傾向が改善したという、それまでの常識からからは予想もしなかった成果が、臨床現場から相次いで報告されました。学術的な研究も多方面から行われるようになり、科学的、学問的な裏付けのある分野になりつつあります。

 

 その一方、咬み合わせと身体との関連性については、解明されていない事柄も多くあります。解明されていないことの内容は、大きく分けて二つあると思います。ひとつは、咬み合わせと身体各部とが、具体的にどのような対応関係にあるのか、また、どのような仕組みで関連しあっているのか、という関連性のメカニズム。もうひとつは、身体に起こっている不具合の、どこまでが咬み合わせによるものかという、咬み合わせ治療の適用範囲の基準。もちろん、両者は別々に独立しているわけではなく、メカニズムが判れば、適用範囲も自ずから明らかとなるでしょう。

 

 最近の私は、後者、すなわち適用範囲の方に関心を持っています。なぜなら、歯科に限らず多くの分野の方の研究成果を取り入れながら歩行を観察しているうちに、全身の力学系に影響を及ぼす要因が、咬み合わせ以外にもたくさんあり、しかも、それらが複雑に関連しあっていることに気がついたからです。もちろんこれまでも、咬み合わせ治療が万能だと思ってきたわけではありませんので、“咬み合わせの影響と、咬み合わせ以外の要因の影響力を識別することの必要性”をより強く感じるようになったと言った方が正確です。

 

 全身の力学バランスに影響を強く持つ要因は、私自身が臨床を通して体験しているものだけでも、たくさんあります。寝相や頬杖、スポーツや職業上の体の使い方の癖などは、体に歪みを起こさせるものの代表です。姿勢から顔かたち、歯並び、もちろん歩行にも、影響が出ています。これらは、体に対して不適切な力を作用させることによって起こるものですから、形態や運動機能に現れやすいため、比較的判別が容易です。

 

 それに対し、歯科治療に用いられている材料による影響は、形態に顕れるというよりも、痛みや発熱、皮膚の状態、アレルギーというような、細胞レベルの代謝に関わって反応が出やすいような印象を持っています。しかも、その影響力がとても大きいので、もし、咬み合わせが具合良く整えられたとしても、最後に仕上げる時の材質で、期待していたような成果が得られない場合さえあるに違いないと、最近では思うほどです。

 

 このような状況の中で考えますと、咬み合わせ治療が、本来の役割を果たし、予知性のある治療法として確立され、歯科医療のスタンダードな一分野として認知されるためには、咬み合わせの影響と紛らわしい要因が検証されて、咬み合わせ治療の適用範囲が明らかになることが、是非とも必要であるとの感を強くします。

 

 咬み合わせ治療は、心身両面にわたって極めて有効な治療法のひとつですから、多くの研究者、臨床家によって、検証されることを願ってやみません。

 

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