Column

コラム

子供の歯列矯正

こんにちは。
あなたがあなたらしく生きるための歯科医療。 歯科医師・口腔カウンセラーの佐藤恭子です。
今回は歯の生え変わりを利用した子供の歯列矯正についてお話します。

【スタートの時期が大事】

子供の時から始める歯列矯正は、まだ一般的に知られているという訳ではありません。
今でも、乳歯があるうちは歯列矯正ができないと思いこんで、スタートに最適なタイミングを みすみす逃して、お子さんが悪い歯並びの永久歯になってから、相談に見える方がいらっしゃいます。

生えかわりの時期は、顔立ちが出来上がる時ですから、悪い咬み合わせで育ててしまうと、 歯並びを治しても、顔や体のゆがみが残ります。

特に、受け口のお子さんは、早いうちからの相談をお勧めします。
受け口のまま生えかわってしまうと、歯並びは治しても、受け口の顔立ちは残ります。
また、極端な場合、下アゴの骨を切るという治療法になることがあります。

その一方、子供の歯列矯正では、顎の成長不足を補いながら、永久歯が生えてくる場所をつくって、 順番に生え変わらせていくので、永久歯が生えそろった時には、良い歯並びになっています。

口に入れる装置は、夜間の8時間ですから、学校には何もつけていきません。
小臼歯を抜歯することもありません。

子供の矯正には、このようなメリットが沢山ありますが、治療をスタートするタイミングが大切です。
それはいつかと言いますと、お子さんの前歯が上下とも4本生えてきた時期です。
前歯上下4本ずつがデコボコしていていたら、それ以上は待たないで、歯列矯正治療の診断を受けましょう。
目安は、小学校の1.2年生です。

“小学校1年生は矯正1年生”と覚えておくといいでしょう。

【子供の時に歯並びを整えると顔立ちがきれいに育つ】

次に、子供の歯列矯正と大人の歯列矯正の違いについてお話します。
お子さんの歯列矯正は始めるタイミングが大事というお話をしました。
なぜかと言いますと、前歯が正常に並んでいないのはこの時までに起こっているべき顎の成長が 足りていないからです。乳歯の後に生えてくる大人の歯が並ぶための “顎の幅” が足りていないのです。

これをレントゲン写真で見ると、上顎の骨が台座ごと窮屈に歪んでいるのがわかります。
鼻の骨が曲がっていることも珍しくありません。
このような歪みを残したまま成長すると、顔立ちまで変形します。
9歳までに、上下の前歯4本ずつをきれいに並べておくのが目安です。
アゴの幅の成長をおぎなっておくのです。そうすることで、前歯だけでなく、奥歯も並びやすくなります。
その時々に起こる正常な成長をサポートするとそのお子さんが成長した時に本来なるはずだった 良い咬み合わせや整った顔立ちが得られます。ここが、成長が終わってから行う大人の矯正との違いです。

【子供の矯正に分析が大事な理由】

開始時
終了時

子供の矯正は、歯が生えかわるのに合わせて場所を作っていけば何とかなるという訳ではありません。
お子さんの歯並びが、今、どんな特徴を持っているか。やがて、どんな歯並びになりやすいか。
一人一人の特徴を診断して、注意深く治療を進める必要があると御存じですか?

大人の歯列矯正であれば、治療を始める前に、分析して説明を受けるのが当たり前と思っている方でも、 子供の歯列矯正となると、これから生えかわっていくのだし、顔も大きくなっていくのだから、 今の骨格を分析しても無駄と思っていませんか?

けれど、いえ、だからこそ、道しるべとしての分析が必要なのです。

8歳、10歳、12歳。
歯並びの節目の標準的な値は研究し調べられています。
それらと照らし合わせて分析する事で、小さいころから治療をしてきたのに永久歯の抜歯が 必要となる事態も防げます。

バランスの良い永久歯列を目指して、成長をサポートする。
それが、子供の歯列矯正です。分析はその為の地図とお考え下さい。

【舌のクセが悪い歯並びをつくる】

次に、歯並びを悪くしている生活習慣や舌の働きについてお話します。

お子さんの歯並びが【受け口】と気づいたら、前歯がまだ乳歯でも子供の矯正をしている歯科医院に ご相談ください。受け口は、放置したまま永久歯列にしてしまうと、成長と共に下顎の骨が前に出てきて、 生えかわった後から歯並びを治しても、受け口特有の下顎が突き出た顔立ちが残ります。

この事を知らずに乳歯があるから、まだ矯正治療の時期ではないと放置しておくと、 重症の場合には、下の顎を切り詰めて下顎を後ろに下げる場合さえ出てきます。

早くに受診して、前歯の上下逆転を治しておけば、顔立ちの歪みも残りません。
なぜかと言いますと、その理由は、下顎の骨を前に成長させてしまう原動力にあります。

実は、下顎を前へ前へと成長させてしまうのは、舌の使い方のクセです。

受け口のお子さんでは、いつも舌先が下顎の裏に触れていて、嚥下、つまり、
唾液や食べ物を飲み込む時に、舌先が下の前歯と下顎の骨を内側から前に押しています。

嚥下運動の平均的な回数は1日600回程度ですから、成長する時期に、これだけの回数、 間違った方向への力が繰り返しかかると、遺伝で決められた姿ではなく、間違ったクセによって 歪んだ姿に成長します。

【舌の癖を治しただけで受け口が治ったお子さん】

実際に、舌の使い方をなおして強い受け口を治したお子さんの例をお話します。
原因をどう考えるかで、治療方法が全く変わることを症例を通してご紹介します。

実際のところ、受け口の治療も様々です。
受け口になってしまった原因が舌の使い方のクセにあることを知らないと、
お子さんの治療に大きな負担を強いることになりかねません。

2021年7月のある日、受け口の11歳のお子さんを連れてご両親が相談にいらっしゃいました。
まさに大学病院の矯正科で治療を始める直前で、その予約日を延ばしての来院でした。

大学病院の治療計画では、受け口の度合いが重症なので、上顎の骨を顔の外から引っ張り前に 成長させる方針でした。そのために、約3年間は、学校から帰ったら翌日の朝まで、寝る時も顔の前に 枠をつけて過ごす治療計画になっていました。

ご両親は、実際のお子さんの生活を考えると、大変なストレスになると悩んでおられました。

そんな時、たまたま、ご近所の奥様から、 「うちの息子は、二人とも受け口をこちらの医院で治したけれど、そんな装置は使わなかった。
一度、行ってみたら?」とアドバイスされました。

ご両親そろっての来院に、真剣なご様子が伝わってきます。
息子さんを拝見すると、確かに、典型的な、しかも強度の受け口の顔立ちでした。

そこで、レントゲンなどのデータをもとに分析をしてみると、上顎の前への成長は標準の範囲で、 下顎の位置が前に出ていることがわかりました。
さらに、舌先を上の前歯の後ろに当てて軽く口を閉じてもらうと、前に出ていた下顎が後ろに戻って、 前歯の先同士が向かい合うのでした(構成咬合)。

このような診査から、上顎の骨が小さいのではなく、下顎を前にずらした位置で
咬み合わせていることが、このお子さんの受け口の実態である事がわかりました。

そして、ここが大切な事ですが、下顎を前にずらしている原因が舌の使い方のクセなのです。

ご両親には、実際にお子さんの舌の動きを見せながら、このことを説明し、お子さんの受け口の原因が、 舌の使い方のクセであることを理解しました。

そこで私は、もし、原因である舌の癖(舌習癖・嚥下異常)をきちんと治すならば、 使う装置は、口の中に入れるだけ、しかも夜だけで済むことを伝えました。
大学病院で始まることになっていたもう一つの治療法と比べて、お子さんへの負担が少ないことから、 ご両親は、当医院で治療することを選びました。

その後、わずか一か月で、上下の前歯の咬み合いが逆転し、正常になりました。
どのような治療をしたのか。

嚥下(呑み込み)の時に、下顎の骨を前に押し出している 舌のクセを修正し、夜、寝ている時に、下顎を正しい位置に補正する シリコン製の装置をはめて寝ていただきました。
この間、歯には力を加えていません。

歯の矯正と言いますと、硬い骨と硬い歯の関係をイメージしがちですが、
歯並びを取り巻く筋肉の働きを正しく修正することで、このような治療ができるのです。
このお子さんは13歳になり、身長もぐんと伸びました。
受け口は、身長が伸びる時に下顎の骨が前に成長して再び受け口になってしまうと心配されますが、 もうその心配もありません。

お子さんが受け口だと気づいたら、乳歯列だから早いと思わずに、子供の矯正をしている歯科医院に 相談をしてくださいね。

最後に比較写真をお見せします。

初診時(2021/7/21)

最新のお写真(2023/1/23)

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