Column

コラム

咬み合わせ治療におけるニワトリとタマゴの関係

 今日は、鍼の研修の日でした。その会は、“経絡”という“気の流れのネットワークを整えることによって全身の調整をするのが特徴です。午前中は、中国の古典に基礎を置く東洋医学の講義、午後は鍼の実習です。皆さん鍼灸師の資格をお持ちの方ばかりで、大変デリケートな鍼のテクニックの習得と、診断・治療の体系の臨床の場面での組み立てに熱心に取り組んでいらっしゃいます。そんな中で、いわば門外漢の私は、先生方のお手を煩わせながらの研修です。

 

 入会したての頃は、“歯医者さんが、なぜ鍼の会に入って来たのか”と不思議がられました。そんな時は、咬み合わせと全身の関係に興味を持って治療するうち、東洋医学的な体の見方が出来るようになりたいと思うようになったからと、お答えしてきました。実際、咬み合わせと全身のバランスの間には相互性があって、咬み合わせという口の中の力学システムを変えると体の力学バランスが変わり、体のバランスは咬み合わせに微妙に影響してきます。だからこそ、咬み合わせ治療をする際に、一方で全身のバランスを整える事が、相乗効果を発揮するのです。東洋医学、わけても全身の気血のバランスを整える経絡理論は、咬み合わせ治療をするに当たって直立二足歩行という全身の力学システムを整える事をもう一本の柱とする私の臨床にとって、大変有効な視点を与えてくれます。

 

 さて、患者さんからこんな質問を受ける時があります。“先生、私の体のこのような症状は、歯が原因なのですか?”その質問を受けると、いつも、“ニワトリが先か、タマゴが先か”という命題を思い出します。つまり、“歯(咬み合わせ)の乱れが先か、体の狂いが先か”という訳です。直立二足歩行というパラメーターを通して見る限り、ヒトによってニワトリが先のように思える方もいらっしゃるし、タマゴが先だったかなという方もいらっしゃるように思われます。

 

 例えば、ある方は、歯を抜いたまま何年も過ごしてしまった為に、明らかにその影響と分かるような体の狂いと、それによる症状をお持ちです。このような場合には、咬み合わせの狂いが先(原因)という要素が強いと思われます。またある方ではお怪我の体験があり、それをかばって過ごすうちについた姿勢の特徴や歩行のアンバランスが体に残り、それが咬み合わせにも影響し補強され、今では固定された体の症状となっているという方も見受けられます。そのような方の場合には、体のバランスの乱れが先(原因)という要素を重要視して治療に当たったほうが、治療の成果がスムーズであるように思います。このようなタイプの方の場合、体のバランスを回復するだけで大半の症状が消えてしまい、極端な場合、咬み合わせの治療を希望していらした患者さんであったのに菌には手をつけないまま治療が終かつてしまったということさえあります。

 

 臨床の場面では、既往歴という形で、それまでに体験しか病気や怪我あるいは手術の経験などを伺って、現在の状態と合わせて、その人がニワトリタイプか、タマゴタイプかの見極めをしていきます。それによって、治療の組み立てのプランを練る訳ですが、私の場合、まず最初は体のバランスを回復する事が最近特に多くなりました。ある程度体のバランスが整っだ上で、体からのアプローチでは解決がつかずに残ってしまった体の症状と咬み合わせの関係をみて、そこに相互性としての対応関係が認められるならば、それは咬み合わせに起因する症状である可能性が高く、咬み合わせを改善する事によって症状の軽快、消失の可能性が高いと考えています。

 

 咬み合わせにたずさわる歯科医の多くが、それぞれに関心のあるフ方法を用いて、咬み合わせと全身の双方からアプローチするようになってきています。また、歯科が専門ではない領域の方も、咬み合わせに関心を持って下さる方が多くなりました。専門を異にする方達との知識技術の交流、治療上の協力

 

に依って、今よりも更に多くの患者さんが、健康を享受出来るようになる事を願ってやみません。

 

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